レンタルキッチンを開業する50代女性
社会人向け加工食品専門学校ピクルスアカデミー
今回はこれまでになかったパターンの受講生がいらっしゃったのでご紹介いたします。
関東にお住まいのSさんは既に工場件店舗の物件を建てておりました。
物件の写真をみせてもらった所、とても良い感じの店舗で特に問題はなさそうです。

Sさんのレンタルキッチン。自分に製造の知識が全くないので、レンタルキッチンの規約や値段設定が出来ていない状態。

加工品製造の知識を持っていないと、利用者が違法なことをやっているのか判断ができない。家で仕込みをしてきた物を使うなどは絶対にNG。

こういう事で食中毒が起こるのです
しかし、ヒアリングでSさんの話を聞いていると行動力はめちゃくちゃあるのですが、事業に対する「芯」や「軸」のようなものがなく、意思決定がブレまくっているのです。
例えば、この店舗も最初は自分が作る作業場として作ったそうなのですが、工務店の設計士に「こういうのもあった方がいいですよ!」と計画になかった店舗部分を提案され、「そんなものなのか」と流されて作ってしまったり、工場として日常使いするので、汚れても傷ついても気にならない様に無機質な内観にする予定だったのに、逆にオシャレに作られてしまい、その仕上がりにSさん自身も気に入ってしまい「これは自分が使うのではなく賃貸物件としてシェアキッチンにした方がよいのでは?」と思い、レンタルキッチンにしてしまったりと、とにかくブレまくるのです。
講座当日には「実は加工場のレンタルを始めてしまった」と伝えられて、話を聞くとトラブルが続出しており、原因はやはりSさん自身にありました。
トラブルの原因は、
・一度貸してみて料金が安すぎて後悔したから料金をアップした
・自分に製造の知識が無さすぎて利用者に禁止事項などが伝えられない
この2つがメインだそうです。
料金設定については他の事業者を参考にして決めたと言います。
そこで私は「じゃあ何故この事業者がこの値段設定にしてるかわかりますか?」と質問すると、「わかりません」というお返事。
ただ単に、他社のレンタルキッチンの料金設定をみて「この位が相場なんだな」と判断するのは大間違いです。
考えなければならないのは、「何故その料金設定にしているのか」という理由と、「自分がそこの物件でいくら稼ぎたいのかという目標値」です。
Sさんはこの2つを全く考えていませんでした。
料金設定はその物件の設備や使用条件でいくらでも変わります。
例えば製造許可を物件で取得するのか、利用者自身に取得してもらうのかなどで利便性が変わり、故に料金も変わります。
設備もどの程度揃えて、機器の使用料は施設利用料に含ませるのか、別途徴収するのかでも変わります。
しかし、Sさん自身が加工品の製造の全くのド素人で、設備も工場も設計業者に言われるがママ作った状態。
まったく必要のない設備も買わされていました。
つまりSさんにはその物件や設備の価値が全くわからないのです。
そんな人に料金設定なんか出来る訳がありません。
私は話を聞いている最中に「今すぐにレンタルキッチンの募集を停止してください」と指示ししました。
ありがたい事に毎日問い合わせが殺到しているそうなのですが、こんな状態で運営をしているとトラブルを招くだけなので、まずは一旦停止して、体制を整えることを最優先にしました。
こんな状態で営業を続けていると、利用者があのマフィンの大食中毒事故のようなものを起こしかねません。
そうなった時、責任の一端を負うのはSさんです。
それだけは絶対に防がなければなりません。
それと、もう一つのトラブルの原因が「Sさんが製造の知識がない」という事。
自分に知識がないので、どこまでやってよくてどこまでがNGなのかという明確なボーダーラインが引けないのです。
つまり、Sさんが決める施設の利用条件の根拠が法律を準拠したものではなく、Sさんの適当な感覚によって決められているのです。
この施設では菓子製造業を取得しているので、パンなどは作れます。
しかし、利用者のほとんどが素人なので、食品製造に対する知識も衛生管理の意識も激甘です。
例えば、施設利用料を抑える為に「パン生地の仕込みは自宅でやって、仕上げを施設でやりたいけど大丈夫ですか?」と聞かれたそうなのですが、「いいですよ」と答えてしまったそうなのです。
「大丈夫なわけないじゃん!」と皆さん思うはずです。
では聞きます。
何故ダメなんですか?
衛生上問題があるからですか?食品衛生法で禁止されているからですか?どこまでだったら自宅でやっていいんですか?
こういうことを利用者から質問されたら全部答えられないとダメなんです。
今回の講座終了後、Sさんに指示したことは一つ。
「レンタルキッチン事業は一旦停止し、まずはSさん自身が商品を作って完成させること」
商品の完成させるには細菌検査にだしたり、食品ラベルを作ったり、pHを計測したり資材を注文したりと様々なことをクリアしなければなりません。
それらをSさん自身が実践することで、商品化までの行程を身をもって理解することになります。
その行程のなかで、食品衛生法や食品表示方、景品表示法なども学ぶことになります。
どの製造許可でどこまで作ることが出来るのか、というのも身をもって知ることになります。
自分の知らない領域で商売を始めるには、その領域の必要最低限の知識を身につけておかなければなりません。
こと、人が口にする「食品」に携わる事業であれば「安心安全に関する知識」は絶対に必要で、とても慎重にならなくてはなりません。
みなさんも一抹を不安を感じながら恐る恐る商売をするのではなく、何を聞かれても全部返答ができる状態で商売をなさってください。
それでは!

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