大量食中毒を起こした「マフィン」の原因

みなさん、昨日のYahooトップニュースに出てた事件見ましたか?
マフィンの食中毒事件です。
https://news.yahoo.co.jp/articles/56c3f1b65211dd9bae50ed266b587c5409631dc4

先日行われたビックサイトの展示会で提供していたマフィンから「納豆の匂いがする」「中開けたら糸を引いている」と苦情が入り発覚した食中毒事件です。

この商品の販売者の謳い文句を見てみると「全て防腐剤、添加物不使用で市販の焼き菓子の半分以下のお砂糖の量で作っており、離乳食完了期のお子様より安心してお召し上がりいただけます」とあります。

別に健康のために砂糖も塩分も減らしたければ減らせばいいですが、私たち加工業者がなぜ高濃度の砂糖や塩で果物や野菜を漬け込むかわかりますか?

それは食品中の水分を「結合水」に変化させる為です。

食品には「自由水」と「結合水」の2つの水分があり、食品の腐敗の原因になる微生物が利用できる水分は「自由水」です。

「自由水」は食品内の分子、粒子が自由に動き回る事ができる水で、微生物が増殖に利用できます。
一方「結合水」は食品内の様々な成分が水素結合で結びつき微生物が増殖できない特徴を持ちます。

とても簡単に言うと、砂糖と塩は使用量を増やせば増やすほど「自由水」が減ります。
「自由水」が減るということは、微生物が活動し増えるために使える水が減るので腐敗が防げるという事になるのです。

この「自由水」の割合を示す指標を「水分活性」と言い、水分活性を低くすれば微生物が増えにくく食品の保存性は高まります。

微生物によって生育できる水分活性は決まっていおり、一般細菌で0.91、酵母で0.88、カビで0.80といわれており0.5以下であればあらゆる微生物の増殖を防ぐことが可能です。


しかし、現実的に全ての食品を水分活性0.5以下にすることは不可能なので、うちのピクルスのように煮沸温度や酸度(pH)の管理を行うことで保存性を高めたりする商品もあります。

このように腐敗と微生物は切ってもきれない関係なので、食品をきちんと乾燥させたり、焼成したりして微生物を死滅させるのですが、それを何の知識もないまま感覚だけでやっている「人」や「商品」が多すぎるのです。

「大丈夫だろう、大丈夫っぽい、自分が食べてみて大丈夫だったから大丈夫」

基本的にこの「だろう」で判断してしまうのが諸悪の根源です。
これは人の五感でで判断する「官能検査」というもので、安全を担保するエビデンスには全くなりません。

商品を取引する場合、小売店側に商品企画書を提出するのですが、検査項目で「官能検査」のみしかチェックしていないものは取引すらしてもらえません。

通常は水分活性をいちいち調べたりしません。
食中毒を起こす原因は微生物によるものなので、細菌検査の結果が重要なので講座でも細菌検査の方法しか教えていません。

このマフィンの製造者は個人でやっているようなので、食品表示のラベルも見ましたが非常にお粗末で、こんな書き方をしている人は恐らく細菌検査にもだしてないのだと思います。

「焼いて熱を通しているから大丈夫だろう」

という甘い自分勝手な判断で、健康被害をだされてしまっては被害にあった人はたまったもんじゃありません。

恐らくこの製造者には行政指導が入り、保健所の検査も入り、もう同じ場所で、同じ屋号で商売をすることは難しいのではないかと思います。

私は来週山口県技術センター主催の食品表示ラベルや栄養成分表示の研修に行きます。
人に教える立場の私でさえ、今だに研修を受け情報をアップデートしているのです。

今のところ受講生からこういった事件を起こしたという話は聞いた事がないので、きちんとやってくれているのだと思います。

みなさん、本当に気をつけてくださいね。

※細菌についての質問は受け付けていませんのでご了承ください

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