作りたい気持ちだけで作った商品は売れない

15、16日の東京講座、無事終了いたしましたー。

毎度の事ですが、疲れました(笑)

もちろん全力で講義をした心地よい疲労感です。

さて、今回の受講生はちょっと特殊?な方がいらっしゃって、関東の青果市場で事業をおこなっているTさんという女性経営者の方です。

※今回の記事は長いです

実はTさんはコロナ禍にピクルスアカデミーが対面講座が出来なかった時期にオンライン講座を受講されており、その後実際に商品化に成功し既に販売をしています。

ヒアリングシートにその事が記載されており、事前面談の時に私が「もう加工品作れるようになっているのに何でもう一回受講するんですか?」と聞くとTさんは「売り方が全くわからないんです」と言うのです。

何を作っているのかを聞くと「ドライフルーツを作っている」との事だったので、実物を見たいので当日持って来きてもらうようにお願いしました。

それがこれです。

Tさんのフリーズドライで作ったドライフルーツ。

商品としての体を全くなしていない。趣味で作ったようにしか見えない。これでは絶対に売れない。

この商品を見た瞬間正直にお伝えしました。

「これ絶対売れませんよ」と。

Tさんは「そうなんです。全く売れないんです(苦笑)」と苦虫を噛んだような表情で、続けてこう言いました。

「何がどう悪いのかさっぱりわからないんです。」

「何がというレベルではなくて、全部ダメです。売れる要素が一つもないですし、まず商品としての体をなしていないです。」

みなさんは何が問題か分かりますか?

商品の中身自体は問題ありません。

ぶっちゃけて言うと、中身は何でもいいんです。

ジュースでも、ジャムでも飴でもグミでも細菌検査をクリアしているものであれば何でもいいんです。

一番の問題は、「何の商品か全くわからない」という事です。

「mercade.legumes」という謎の文字が書いてあるシールが一枚貼ってあるだけ。

しかも素人が書いたであろう手書き風の果実のイラスト付き。

これを初見で見た人は、商品情報が無さすぎて気味悪さすらも感じてしまうと思います。

近所のお菓子作りが好きな人が趣味で作ってるんだろうな、と。

そんなものを口に入れたいと思いますか?

そういう感情を抱かせるパッケージデザインは絶対に採用してはダメなのです。

もう一度言いますが、商品の中身の問題ではありません。

これも食べたらおいしんでしょう。

しかしお客様は食べる前に買うのです。

食べるのは買った後なのです。

なので、まずは買ってもらえるようなデザインにしなければならないのです。

この商品の問題点は

・なんの商品なのかわからない
・mercade.legumesが何なのかわからない
・デザインが意味をなしていない
・商品の特徴が全くわからない

パッケージデザインは商品の顔です。

お客様は数多ある商品の中からパッと見ただけで欲しいか欲しくないかを判断します。

みなさんもそのはずです。

この商品が商品棚に並んでいたらある意味目を引くと思いますが、それは違和感を感じた興味であって「欲しい」という購買意欲にはこのパッケージではつなげる事はできません。

なので残念ですが、このパッケージが何故ダメなのかという判断ができない人は絶対に自分でデザインをしてはいけないのです。

外部のデザイナーに依頼をすべきなのです。

まずはこれが一点。

それともう一つ大問題なのが、このドライフルーツを「フリーズドライ」で作っているというのです。

フリーズドライとは真空凍結乾燥機という非常に高額な機械でないと作れないのですが、Tさんはそれを既に購入してしまっているというのです。

私「これフリーズドライで作ってるんですか!?!?」

Tさん「はい。しかももう買ってしまいました(笑)」

私「なんでこれ買おうと思ったんですか!?」

Tさん「りんごのフリーズドライがどうしても作りたくて…」

私「いやいやいやいや、違う違う違う。作りたくて作った、というのはもうビジネスではないです。ただの趣味ですよ。私たち商売人は売れる商品を作らないとダメなんですよ。」

作りたいという動機だけで商品化をしていいのは、本当にその商品に情熱を注げて、死ぬ気で売る気がある人だけです。

Tさんもそういう気持ちがあるのかもしれませんが、完成した商品を見るとその気に満ち溢れているようには到底思えません。

いえ、今回私が言いたいのはそこでないんです。

「真空凍結乾燥機」というとんでもない機械を持っていて、何でドライフルーツなんか作っているんだ、という点です。

真空凍結乾燥機ではどんなものが作れるかというと、乾燥味噌汁や、カップヌードルに入っている肉や野菜など、簡単に言うとお湯や水で戻せる食品です。

フリーズドライというのは気圧と昇華の原理を利用した製造方法で、通常の気圧では氷は液体から気体に変化しますが、真空状態では氷は液体にならず一気に気体へ変化する(昇華)ので、形状を保ったまま水分が乾燥されるのです。

なので、味噌汁を四角い容器に入れて凍らせて真空凍結乾燥機にかけると、四角の形状を保ったまま水分だけ抜けたスカスカのスポンジ状の味噌汁の固形物(フリーズドライ)が完成します。

この味噌汁の固形物は水分だけ抜けているので、お湯をかければ暖かい味噌汁として飲む事ができるのです。

これがコンビニなどで売っている味噌汁やスープのフリーズドライです。

フリーズドライは水で戻せば食べれる食品が作れる製法。雑炊や味噌汁、スープなども作れる

こんな機械をもっていながらドライフルーツしか作っていないのは宝の持ち腐れです。

事前に相談されたら機械を買うのを止めてますが、もう買ってしまったのなら最大限に活かす方法を考えるしかない。先に相談してほしかった…

そんな機械をもっていながら、なんで作っているのがドライフルーツなんですか!

水分活性もほぼゼロになるので賞味期限を気にする必要はない、水分ゼロなので軽い、水で戻せるものであれば何でも商品にできる。

「こんな機械をもっていて、作る商品がドライフルーツなわけないでしょう!」

とお昼休憩の時に真剣に注意をして、Tさんは今後ドライフルーツではない商品開発をする事になりました。

作りたいという動機はものづくりにおいて非常に重要な事ではありますが、売れなければそれも続けていく事はできません。

綺麗事だけでは商売はやっていけないので、自分が作るべき商品は何なのか、それは本当に売れるのか。どのように売っていくのか、というのを真剣に考えて商品開発はやらなければなりません。

考え尽くしてやっと作った商品でも売れないことも普通にあるのですから。

それでは!

卒業生の実績、受講生の感想など


※以下事例で紹介している方は全て2ヶ月フォロープログラムを受講された方です

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