なぜ加熱殺菌が必要なのか?

受講生の質問第一位。

「なんで加熱するんですか?」

皆さん何となーく感覚では知っているんですよね、熱を通して菌を殺す必要があることを。

「じゃあ何分加熱したらいいと思いますか?」

「加熱したら菌は増えないんですか?」

と意地悪な質問をすると皆さん答えられません。

食品中に存在する微生物は一般的に、細菌、カビ、酵母に大別されています。

これら微生物を死滅させる方法として一般的に用いられる手法が「加熱による殺菌」です。

微生物のほとんどが85℃で30分加熱すると死滅することが確認されているので、食品衛生法の基準ではこの加熱時間がよく用いられています。

しかし、厳密に言うとこの加熱時間でも微生物は生存しています。

え?それじゃダメなんじゃないの?

と思うかもしれませんが、実はダメではないんです。

食品を流通させる為に、細菌と食品との関係には2つの概念が存在します。

それは「商業的無菌の確保」と「商業的殺菌」です。

「商業的無菌の確保」とは全ての微生物を完全に滅菌することではなく、商品が流通時に製品中で生育する可能性のある微生物を制御し、生育させない条件を達成することです。

つまり、細菌は存在しているけど、何個までだったらOKだよ、という基準が定められているのです。

もう一つの「商業的殺菌」というのは、

商品が常温流通下で経済的損失をもたらす微生物や腐敗菌などが一切存在しない、商品価値が維持されているもの。

つまりレトルト食品です。

みなさんがスーパーなどで目にするカレーなどのレトルト食品などがこれです。

レトルト食品を製造する場合は食品衛生法で条件が厳しく制限されており、120℃で4分以上加熱することが最低条件として義務付けられています。

つまり、レトルト食品以外の商品は「商業的無菌の確保」が担保された商品となるわけです。

これは上級編の講座内容になるので、あたまがチンプンカンプンになる方もいらっしゃると思いますが、今ピクルスアカデミーの講座で教えている内容は、この「商業的無菌の確保」された商品を教えています。

では「商業的無菌の確保」の商品はどうやって製造するのか?

もちろんこれも「加熱による殺菌が必須」になります。

基本的に細菌は熱でしか死なないですからね。
(※もちろん例外もあります)

でも加熱できない商品も世の中には存在するじゃないですか?

そういうのはどうやって作るのかというと、pHや塩分や糖度を調整して細菌が生育できない環境を作り、食品が腐敗しないようにするんです。

ピクルスの場合はpHという水素イオン濃度(≒酸度)を強くして微生物が生育できない環境を作り、何ヶ月も常温保存をさせるのです。

しかし、強いpHで漬ければ良いかというとそんな単純なものではありません。

酸っぱければ酸っぱいほどpHは強くなりますが、そんなもの食えたもんじゃないので商品価値はありませんよね。

なので旨さを維持しつつpHを調整し様々な調味料で味付けをし、加熱殺菌で微生物をある程度殺菌し生育環境を制限する。

こんな事をしながら「商業的無菌の確保」された商品を作っていくのです。

ジャムやコンポートであれば糖度を、塩辛や味噌であれば塩分を、ドライフルーツやビーフジャーキーなどであれば水分を調整して細菌数を調整するのです。

話だけ聞くと難しそうですが、理屈さえわかってしまえばこれらは家庭用調理器具だけで作ることができます。
(※レトルト食品は作れませんよ)

「この食品は何度で何分加熱したらOKなのか?」というように加熱殺菌は加工食品とは切っても切り離せない関係なのです。

それでは!
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