売上をとるか従業員の働きやすさをとるか②

昨日の続きです。

ランチ営業を始めて売上が回復しなんとか持ち堪える事が出来ました。

しかし、スタッフには急遽「ランチをやって」とお願いする事になるので、作業は切る、焼く、盛り付ける位の超単純なオペレーションのみにしてスタッフの負担を最小限にするようにしました。

スチコンと食器洗浄機を買い、とにかくスタッフの負担が軽減できるようにスタートさたのですが、幸か不幸かランチが大人気になってしまい、現場は大混乱。

製造スタッフの人数を増やし、なんとか現場をまわす日々。
しかし、シフト制なので毎日十分な人員を配置できるわけではありません。

年末に忙しさはピークを迎え、翌年頭には「こんな激務やり続けられない!」という人が続出し大量の退職者を生むことになってしまったのです。

ランチを始めた事で売上は確保できたのですが、製造スタッフを増やしたので人件費は倍近くに。
その為、いくら売り上げても残る利益はスズメの涙程度にまで悪化しました。

私自身が飲食店を運営するのも初めてで、ましてランチのように注文を受けて食事を提供するという経験もゼロ。
とにかくお客さんから不満がでないように、注文から10分以内には出せるメニューに絞り、なおかつ20種類ものメニューを用意しファミリーレストランのような体裁を作り上げました。

これが本当に良くなかった。

いくら単純なオペレーションにしたからといっても、20種類もメニューを作れば、それだけ仕込みが発生し、覚えなければならない作業も増えます。
現場は作業量が膨大に増え、私に対する批判の声も聞こえるようになり、翌年の崩壊を招きました。

30%に抑えていた原価が50%超に

それから残ったスタッフでなんとか1年をまわし、決算をむかえました。

事業の成績表である決算書を融資をして頂いている銀行に持って行き、事業の進捗の説明をしました。

すると開口一番「原価50%になってますけど、これって改善できませんか?」と言われ、「え!?」と驚きました。

私は全ての原価は30%以下に抑えていたので、意味がわかりませんでした。
しかし、数字を見るとほぼ50%。

理由はすぐわかりました。「メニューが多すぎた事」と「少量の破棄の積み重ね」です。

サンドイッチの原価は間違いなく30%以下なので問題はランチです。
ランチはメニューを20種類も用意し、売切れの機会損失を出したくなかったので食材を余分に仕入れていたのです。

これが諸悪の根源です。

運営をする上で一番楽なのは「メニューは1種類だけで製造数が決まっている」という状態です。

例えば、メニューが「ハンバーグのみで1日限定100個」だと、材料費も仕入れも作業量も全て毎日同じなのでとても楽です。
しかし、「メニュー10種類+予備」を毎日用意すると、少なからず破棄が生じます。

なんでこんな事に気づかなかったんだ…と心底後悔しました。

そこで私は大きな決断をします。

「売上の維持」と「スタッフの労働環境の改善」を天秤にかけ、「スタッフの労働環境の改善」を選択したのです。

損益分岐点を見直して労働環境を改善する

しかし「労働環境を改善」とキレイ事を言っても売上は確保しなければなりません。
なのでまず最初に、「損益分岐点の見直し」をしました。

損益分岐点は人件費が下がれば当然下がります。
労働環境の改善については人件費の削減から着手することにしました。

まず、営業時間を18時から15時閉店に変更しました。
全スタッフに出勤シフトの優先順位を以下の様に通達しました。

優先1位…うちの社保に入っている社会人
優先2位…扶養の範囲内で働いている社会人
優先3位…学生

こうなると割を食うのは学生なので、救済措置として土日祝は時給を1200円にアップし、学生優先で組むとしたのです。

次に原価の圧縮です。
製造スタッフにうちの問題点は何かと聞くと、とにかく仕込みが多すぎる事と、覚えなければいけない事が多すぎると即答されました。
なので20個あったメニューを一気に4個にまで減らしたのです。

これが上手くいけば18時以降も残業していた仕込み時間がなくなり15時には退勤になるので人件費も一気に下がります。
しかも仕入れも20種類分のメニュー分から4個分だけになるので仕入れ額も激減します。
メニューの選定は注文数の上位1位と2位のもの、サラダボウルの注文数の上位1位と2位にしました。

ではやってみてどうだったか?
これが売上が殆ど変わらなかったのです。

メニューを減らしても売上が変わらないワケ

これには理由があって、うちのお店に来るお客様の目当ては「野菜が大量に食べれるランチ」で、メニューの豊富さではなかったのです。
萩野菜ピクルスの利用者の9割は女性です。なので、野菜さえ変えなければメインは人気があるものだけでも大丈夫かもしれない、と仮説を立てたのです。
これは本当に賭けでしたが、上手くいきました。

結果、スタッフの作業量は激減したのですが、15時退勤がまだ達成できなかったので、
今度は売上げを落とすことにしました。

損益分岐点がガクンと下がったので、売上目標を下げても最低利益は確保できるようになっていたのです。
なので、サンドイッチの製造数も減らし15時退勤を優先したのです。

これによって今は「全員15時退勤」「最低利益の確保」も達成することができました。

何を優先するかは経営者の判断なので正解はありません。
しかし私の場合は、あの時売上だけを追い続けていたら恐らく事業が続けられていなかったと思います。

今回は長々と書かせて頂きましたが、多くの受講生や受講を考えられている方が同じような悩みを抱えられています。

その方達の指針になればと思い書かせて頂きました。

是非頑張ってください!

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