介護と両立しながら実現したBtoB年間契約獲得の道のり/本郷さとみさん (上級編受講)
介護と両立しながら実現したBtoB年間契約獲得の道のり/本郷さとみさん
社会人向け加工食品専門学校ピクルスアカデミー
介護との両立という困難な状況の中で事業を拡大し、大手企業とのB2B取引やふるさと納税の返礼品選定など、大きな成果を上げている本郷さん。講座を受講したことで、どのように事業の課題を乗り越え、次のステップへと踏み出せたのか、成功の裏側にある「知識の活用」と「ビジョンの明確化」について詳しくお話を伺いました。

全くの未経験者だった本郷さん。受講後にトヨタ「レクサス」販売店のドライフルーツ年間契約を獲得。
本郷さんが受講しようと思ったきっかけを教えてください
【本郷さん】
2023年当初の私は飲食とは全く関係のない仕事に勤務していて、いつか食に携わる仕事をしたいなと思っていました。そんな時、私の中では大きな節目と呼べるような出来事がありこのままやりたいことを我慢した人生は嫌だと思い、独学で飲食の経営学を学んでいこうと思っていたところ、偶然インスタでサイトを拝見し、経営と食品製造など私が学びたいものが全て詰まっていると思い、受講を検討し始めました。
【椋木】
受講前は具体的に何をしようか決めていましたか?
【本郷さん】
お年寄りから幼児まで食べられる、無添加に近いバランスの取れたお弁当やお惣菜、無添加に近いお菓子を作りたいと考えていました。
あ、それとカフェも併設したいと思っていました。
◆アドバイスで目が覚めた「共同経営」の断念と自立
【椋木】
当初検討されていた「共同経営」についてもお聞かせ頂けますか?
【本郷さん】
はい(笑)起業直後に共同経営を検討していたのですが、椋木さんに「絶対やめた方が良い」と言われ結局中止しました。「共同経営は事業の立ち上げの不安を複数人で分散出来て良いように感じられますが、必ず経営の意思決定でモメる時がきます。そもそも一人で起業するぞ!という決意も熱意もなく、創業時から他人に頼るくらいなら起業自体しない方がいいですよ。」と言われ目が覚めました。
その後、共同経営を考えていた方はご家族の都合で休業することになったそうで、女性同士の共同経営では予期せぬ事態が起こり得ることを実感しました。本当に一人で起業しといてよかったです(笑)
【椋木】
そうだったんですね。ではその後、受講された知識を活かしてどのように行動に移されましたか?また、初期の商品開発について教えてください。
【本郷さん】
受講後に父の入院と介護が重なったためテナントを借りるのではなく、先輩のキッチンを借り、教わった知識を活用してまずジャムの細菌検査から始めました。小規模なイベントで商品を出し、名前を覚えてもらいながら新商品を展開することを目標にしました。初期は「りんごとレンコンのジャム」を検査に出し、「やさいのかくれんぼ」というブランド名で、野菜が隠れているフルーツジャムを展開しました。
【椋木】
屋号を「ひだまり食堂」から「繋果彩(ケイカサイ)」に変更されたそうですが、事業内容も進化されたようですね。
【本郷さん】
食品加工に特化するため「繋果彩(けいかさい)」に変更しました。現在の事業内容は、野菜とフルーツの加工販売で、個人事業として中華料理店やハーブティ業者とのB2B取引も始めています。原材料は、地元の農家さんや顧客からの紹介を通じて全国から仕入れています。
◆視覚的な肩書きでチャンスを掴む:対面販売からB2Bへの拡大
【椋木】
販売戦略についてはいかがでしょうか。販路拡大や人脈作りで工夫されている点はありますか?
【本郷さん】
現在、売上の大半はジャムでBtoCがほとんどです。パシフィコ横浜のような大規模なハンドメイドイベントへ出展すると、2日間で数十万円以上の売上を上げるので起業当初はかなりの収益源になっていました。今でもイベント出店する際は手売りで名前を覚えてもらうことに重点を置いており、今後は通販にもシフトしたいと考えています。特に繁忙期は人手不足で、幼馴染みにアルバイトで手伝ってもらっています。販路拡大や繋がりは口コミや人からの紹介によるところが大きく、特に商工会議所のような女性の集まりの中で紹介がありました。名刺には「野菜と果実の加工業」という肩書きと商品の写真を載せることで、加工業者だという事を視覚的に伝え自分の得意分野を明確に発信することを心がけています。起業当初は熱意だけでやっていましたが、2年間で自分の強みが明確になりました。
【椋木】
その甲斐があってBtoBでの大きな成果にも繋がったんですよね?
【本郷さん】
はい(笑)BtoBではその名刺の肩書きがきっかけで果物の加工業者を探していたハーブティ業者様と繋がり、トヨタのレクサスのお茶に使われるドライフルーツを提供する年間契約を獲得したのが大きな成果です。その業者さんから熱心に依頼され、業務用機械を購入してドライフルーツ製造も始めました。その方は大阪万博の企画にも関わっており、ドライマンゴーを使ったジャム販売の機会も得ました。
◆上級編で学んだ科学的根拠がもたらした対等な商談力
【椋木】
受講当初はお弁当やお菓子、惣菜などが作りたいという希望でしたが、かなり路線が変わりましたね。
【本郷さん】
上級編講座を受講したことが転機になりました。今年の1月に上級編講座が新たに発表され、正直初級編での知識では作れる商品の幅に限界を感じていた所に、「レトルト以外の加工品が殆んど作れるようになる」という謳い文句にこれだ!と思いスグにお申し込みをさせて頂きました(笑)
【椋木】
この講座を創設した当初は私自身がピクルスしか作れなかったので、教材もピクルスに限定していたのですが、あれから5年間の間に殆どの加工品が作れるようになったので、今年の1月に半年の制作期間を経てやっとリリース出来たんですよ。
【本郷さん】
初級編では基本的にpHのみを指針とした製法、殺菌方法を学べたのですが、何故その温度と時間で加熱をしなければならないのかがそこまで詳しくは触れられていません。でも上級編はその理由が理論として説明されており、また水分活性(Aw)という非常に重要な指標が追加され、それらを計測する事で殆どの加工食品の加熱殺菌温度と時間がわかるようになっています。今はこの知識があるからこそ、どんな企業相手でも臆する事なく対等な議論が可能となり、その安心感から次の仕事につながっていると実感しています。
【椋木】
加工場の確保や許可取得の経緯についても教えてください。
【本郷さん】
加工場は先輩のキッチンの間借りでは手狭になったので、レンタルキッチンを月極めで借りることで確保しました。時間貸しのレンタルキッチンでは私には不便でしたし、お客様から「どこの場所で作っているかわからないものは気持ち悪くて買いたくない」と言われた苦い経験から、月極めで加工場を持つことで信用度が高まり、企業との取引にもつながりました。許可取得については、当初保健所から「菓子、惣菜両方出せる」と言われたにもかかわらず、担当者が途中で変わり「認めない」と言われたため、一度は菓子の許可のみを取得せざるを得ませんでした。その後、担当者の異動を待ち、別の担当者に申請したところ、1ヶ月足らずで許可が下り、良いタイミングで取得できました。
【椋木】
担当者ハズレあるあるですね(笑)デザインやブランディングについては、どのような状況でしょうか。
【本郷さん】
今はデザインを変更する予定で進めています。ハーブティ業者さんからの紹介で第一線で活躍されている有名デザイナーさんと繋がり、今のデザインを「残念すぎる」と指摘されたのがきっかけで、屋号の変更やデザインの変更を進めています。以前のラベルは「お年寄りに分かりやすければ良い」という漠然としたターゲットで作られましたが、今後は自分のターゲット層を明確にし、ソースの販売開始に合わせてラベルを全面的に変更する予定です。嬉しいことに川口市のふるさと納税返礼品にも選定され、パッケージの箱制作の打ち合わせも進行中です。

「パッケージが残念すぎる」と指摘され販路拡大に伴い一流デザイナーにパッケージを来年刷新予定。
◆値上げの壁を突破する戦略:「松竹梅」と価格の分散
【椋木】
ブランドの統一性を保つためにも、デザインは統一するべきですね。価格設定については悩まれているようですが、いかがですか?
【本郷さん】
本来は800円程度にしたいのですが、今は650円程度で販売しています。一度750円に値上げを試したところ、お客様が購入数を減らしたため、値上げにイマイチ踏み込む事が出来ません。
【椋木】
あー、それは価格を統一している事が原因ですね。よくやりがちなのですが、全部を同じ値段に統一すると値段変更をした時に全てが値上がりしてしまうので、お客様はギョッと驚いてしまうのです。なので最初から松竹梅のような3つの価格帯にしておいて、さらにそれを細かく分けておいてどれが「竹」の値段かわからないようにしておくんです。例えば最高が950円で一番下が750円だとしたら、間の価格を910円、860円、850円、820円、780円、770円、というようにわざとチラシておけば、値上げをした時にどれが値上がりしたのがあまり気づかれないのです。逆にこの中に1000円を超える商品があったらお客様は「これは数ある商品の中で一番高級品だ」と気づいてくれます。世の中にはその中で最も高いものを優先して買う方が必ずいらっしゃるので、そういった方に向けても値段というサインはとても有効です。今は原材料が常に上昇しているので値上げは避けられないので、価格を一定にしない事で顧客の価格意識を分散させるというのも一つの戦略かもしれません。
【本郷さん】
確かにそうですね!それは採用しようと思います!値段をばらけさせるという事は考えた事なかったです。
【椋木】
今後の展望や、古民家を活用した計画についてお聞かせください。
【本郷さん】
今後は食品加工をメインに、最終的には古民家を活用したワークショップを計画しています。地元の高齢者が休憩できるような茶飲み場を設けることで、古くからの伝統をつなげていきたいというビジョンがあります。2〜3年後には古民家のある場所へ移住し、県外でも事業を展開したいと考えており、最近は能登半島の震災復興支援の交流会や三浦半島での移住者コミュニティとも繋がり、来年1月には現地へ赴く予定です。また、南青山のとある有名企業の通販に商品を取り扱ってもらう話も進んでいます。
【椋木】
ありがとうございました。せっかくインタビューにお答え頂いたので、今取り組んでいる事業や製造などで何か質問はありますか?
【本郷さん】
柚子胡椒を常温で販売したいのですが、ジャムとは異なり、糖度ではなく塩分と酸味が重要になるので、その測定方法について教えてください。塩分を強くすれば製造可能でしょうか。さらに、塩麹を入れたソースを開発したいのですが、麹菌の扱いはどうすべきでしょうか。
【椋木】
食品衛生法で問われるのは水分活性とpHだけですから、その数値を基準にすれば問題ありません。柚子胡椒は塩分によって保存性を高めているだけなので、塩分を計測して、上級編講座の早見表を見て殺菌時間を決めて頂ければ常温保存は問題ありません。麹菌は60度で死滅するので、生きたまま届けたいなら冷蔵にする必要がありますが、死んでいても腸内細菌の餌にはなりますので、「麹入り」と謳うことはできます。生きたまま提供するか、加熱殺菌して賞味期限を延ばすかは本郷さんの判断次第ですね。
【本郷さん】
ありがとうございます!頭が整理できました。
【椋木】
では最後に講座を受講した率直な感想をお聞かせください
【本郷さん】
起業経験ゼロ、知識ゼロからのスタートでしたが、学んだことをすぐに細菌検査や商品開発に活かせたのが大きいです。たった2日間の講座でしたが、今では企業様との商談で自信を持って対等に議論できるようになっているのが信じられません。
上級編で、さらに知識の幅が広がったことも大変ありがたいです。本当に受講して良かったです。
【椋木】
貴重なお話ありがとうございました!これからもお互い頑張りましょうね!

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